顕微鏡の歴史

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6. 各種顕微鏡と周辺機器の始まり

6-1 双眼顕微鏡

望遠鏡の発明から間もなく、より見やすい双眼鏡が現れたように、顕微鏡でも双眼観察が求められるようになりました。1678年頃、フランスのシェルバンCherubin d’Orleansが、1個の対物レンズに2個の接眼レンズを組み合わせたという最初の双眼顕微鏡の記録がありますが、本格的なものは19世紀になって精巧なプリズムが製作できるようになるまで現れませんでした。

双眼顕微鏡を製品として市場に出したのは、ナッシュH. Nachet(フランス)が最初で1850年のことです。同じ頃、イギリスのウェナムF. Wenhamも双眼顕微鏡を作り、ロス社などから発売されており、その後各メーカーでも実用化するようになりました。

これらの双眼顕微鏡は、対物レンズの後方にプリズムを置いて開口の一部を分割する方式であったため、像の性能劣化は避けられませんでした。1880年にはアッベが3個のプリズムを使い、対物の開口を分割しないでより高精度の双眼顕微鏡を考案しています。その後、プリズムの接合面を半透鏡とする技術が開発されると、イエンチュF. Jentsch(ライツ社、1913年)やジーデントップ(前出:ツァイス社、1924年)らによって高倍率顕微鏡にも使える双眼鏡筒が完成し、現在に至っています。