顕微鏡の歴史

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6. 各種顕微鏡と周辺機器の始まり

6-4 解剖顕微鏡と双眼実体顕微鏡

図28

対物レンズと接眼レンズからなる複式顕微鏡は、像が180°回転するため資料を観察するだけでなく作業をする場合に大変不便でした。このため作業用顕微鏡としては倍率の高いルーペが用いられました。リオネP. Lyonnet(オランダ)は18世紀半ばに解剖顕微鏡dissecting microscope(図28)により多くの虫の解剖図を発表しました。解剖顕微鏡は19世紀になるとレンズの性能向上が図られ、シュタインハイルC.A. Steinheil(ドイツ)の3枚接合型レンズ(1864年)は20倍程度の大変優れたルーペで現在でも使われています。

一方、ルーペでは大きな倍率を得ることが難しいため、複式顕微鏡で正立像が得られ作業もしやすい顕微鏡が求められました。こうした中、アメリカの生物学者・グリノー(H. Greenough)は、2本の光軸それぞれに同じ対物レンズ、接眼レンズを配置し立体観察しながら解剖作業が可能な実体顕微鏡をツァイスに提案しました。アッベは、このアイデアに対し、観察像を正立にするためにポロ(P. Polo:イタリア)が1854年に発明したプリズムを採用し1897年、最初の双眼実体顕微鏡を完成させました。これはグリノー型として今日の双眼実体顕微鏡の原型となっているものです。