顕微鏡の基礎

ここから本文です

4. 顕微鏡の機械的装置

顕微鏡はこれまでに述べてきた光学装置とそれを支える機械装置から構成されています。図4-1に正立生物顕微鏡の各部の名称を示します。

図4-1 顕微鏡各部の名称

以下に顕微鏡の主な機械的装置につき説明します。

 

1)スタンド(鏡基:base)

顕微鏡の本体部分であるスタンドは、最下部で鏡基全体を支えるベース部(鏡台)と光学系各部を支えるアーム部(鏡柱)から成っています。ベース部は顕微鏡全体の安定性を確保する形状、大きさ、重さをもっています。小形の顕微鏡ではU字型のものが多くありますが、最近の照明系を内蔵した顕微鏡では四角い台型やT字型・Y字型のものが一般的となっています。アーム部は鏡筒や写真・TV装置などを上部に載せ、ステージを支えるため特に頑丈に作られています。また焦準装置もアーム部に組み込まれています。

2)ステージ(stage)

試料を保持し、正確にスムーズに移動させる装置です。鏡基に固定されたステージ固定型と焦準装置によって上下に移動するステージ上下可動型とがあります。また試料を2つのクリップで固定し、移動は手で行うプレーンステージ(図4-2a)と、ハンドルにより試料を前後左右に移動するメカニカルステージ(図4-2b)とがあります。このほか360°回転可能な回転ステージ(図4-2c)があり、 偏光顕微鏡などで使われています。また、工業用では300mmウェハが検査できる大型ステージ(図4-2d)も用意されています。

図4-2 ステージの種類
3)焦準装置(focusing)
図4-3 共軸微動粗動装置

試料にピントを合わせるための装置で、低倍率で観察するときに使用する粗動ハンドルと、高倍率で観察するときに使用する微動ハンドルとがあり、高級顕微鏡ではこれらが共軸になっています(図4-3)。

4)鏡筒(tube)

アームの上端部に組み付け、その上部に接眼レンズ、下部にレボルバを介して対物レンズを取り付ける装置です。旧型の顕微鏡ではピント合わせ時に対物・接眼レンズと共に鏡筒がラックピニオン式で上下移動する機構となっています。一方、最近の多くの顕微鏡は鏡筒がアームにクランプされた固定式(回転は可能)となって います。鏡筒の種類については2.5でも述べましたので説明は省略します。

 

5)レボルバ(revolving nosepiece)
図4-4 レボルバ(7穴)

倍率や種類の異なる対物レンズを回転交換する装置で、2〜7個の対物レンズが取り付けられます(図4-4)。対物レンズを素早くスムーズに切り換えられ、かつ視野中心の試料の位置やピントのずれが小さくなるよう、精密に加工されています。