顕微鏡の基礎

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6. 各種観察法の基礎

6. 2 暗視野観察(dark field microscopy)

試料を照射した光が対物レンズに入らないようにすると、真っ暗な視野の中に試料により散乱・回折を受けて対物レンズに入ってくる光のみが輝いて見えます。この方法は1903年にジグモンディR. Zsigmondyにより発明され(1925年ノーベル化学賞受賞)、限外顕微鏡ultra microscopeと名付けられましたが、現在では暗視野顕微鏡と呼ばれています。固定や染色などの前処理なしで、生の試料が観察できる上、顕微鏡の解像限界(約200nm)よりはるかに小さいコロイド粒子(直径数nm)や細菌の鞭毛(直径約20nm)などの存在や動きを検出できるという特長があります。

暗視野観察を行うには、使用する対物レンズの開口数(NA)よりも大きなNAの照明光を試料に当てるように工夫した暗視野コンデンサを組み合わせるだけで可能となります。暗視野コンデンサには、通常のNAの大きなコンデンサの入射光側にリング絞りを置いた簡易型(図6-3a)と、専用のタイプとしてドライ型(図6-3b)、オイル型(図6-3c)があります。また100×など高NA油浸対物レンズで暗視野観察を行うためには、対物レンズ自身に開口絞り(iris)を内蔵したものが必要となります。

暗視野観察では、対物レンズと暗視野コンデンサとの組合せ条件を守ることはもちろんですが、コンデンサの位置だし・心だしを確実に行い、オイルの気泡や試料のゴミ等がないよう注意が必要です。

図6-3 各種暗視野コンデンサ
図6-4aミジンコ・図6-4b腎臓(無染色)